患者さん | 83歳、女性、G さん |
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症状 | 大きな褥瘡(床ずれ)があり、痛みも強い |
実施した診療や医療 | 褥瘡(床ずれ)の治療を連日行う |
現在の状況 | 褥瘡(床ずれ)は治癒し、快適な日常生活が可能に |
当院は在宅での褥瘡(床ずれ)治療に力を入れています。
正しく治療を行うことが出来れば、患者さんの痛みも減り、日常生活を快適に送ることが可能になります。褥瘡(床ずれ)でお悩みの患者さんのお力になれるよう、スタッフ一同、日々、傷の治り方や皮膚の再生について勉強しています。
今回は実際の治療経過について、写真をもとにお話したいと思います。
ご家族
「お尻の上と踵に、床ずれ(褥瘡)ができていて、どんどん大きくなっています。
膿も出ているようで、シーツがびちゃびちゃになります。
臭いもあって、どうしたらいいのでしょうか。
こんなに大きな床ずれ(褥瘡)ですが、入院しないといけないのでしょうか。
在宅でも床ずれ(褥瘡)の治療ができると聞いて、電話しました」
実際に初診にお伺いしたところ、仙骨部(お尻の上)と踵(かかと)に、褥瘡を認めました。
[ 仙骨部 褥瘡(床ずれ)治療前 ]
[ 踵 褥瘡(床ずれ)治療前 ]
褥瘡治療の基本は、悪い部分をきれいに取り除いて、細菌のいないきれいな環境を作り、身体が持っている治癒力で皮膚の自然再生を行うことです。
新しい皮膚がスムーズに生み出されるためには、汚染された悪い部分をきちんと取り除き、きれいな環境にすることが一番で、ハサミを使って切除する方法(デブリードマン)やお薬を塗って悪い部分を溶かしていく方法などがあります。
仙骨部(お尻の上)の方は感染徴候はなく、切除する必要はありませんでした。スムーズに皮膚を再生するためには栄養状態の改善が望ましく、傷の治癒や皮膚の再生に必要なアミノ酸(アルギニンやグルタミンなど:サプリメントとして)を摂取していただき、毎日洗浄とワセリンを塗って治療を行いました。
踵の方は、ハサミを使って(デブリードマン)、細菌のいる「巣」と思われる箇所を切除しましたが、完全には取り切れなかったので、お薬を塗って悪い部分を溶かしていく方法を併用しました。悪い部分がほぼ溶けた段階からは、塗り薬の使用は中止し、毎日の洗浄とワセリンを塗る治療を行いました。
この塗り薬の使用期間が大事なポイントで、この薬をずっと使っていると、皮膚を作り出す正常な細胞も死滅してしまい、皮膚の再生が困難になります。
したがって、決してずっと使い続けるのではなく、傷の経過をみながら、止め時を正しく判断し使用していくことが、褥瘡治療の大きなポイントです。
では、約8週間の治療を経て、仙骨部と踵の褥瘡がどうなったかというと・・・
[ 仙骨部 褥瘡(床ずれ)治癒 ]
[ 踵 褥瘡(床ずれ)治癒 ]
完全に治癒しました。
これは塗り薬などの使用時期を正しく判断できたこともありますが、一番大きな要因は、連日の洗浄やワセリン塗布を、ご家族や訪問看護さんが本当に一生懸命続けてくれたことです。
治癒した時の患者さんの笑顔はもちろん、ご家族の本当に安堵された表情は忘れられません。
在宅医療は、患者さん・ご家族も含めたチーム医療であることを改めて実感します。
チームの皆と一致団結して目標にむかって頑張ること、これが在宅医療の大きな喜びにつながっていくのだと思います。
医師からのメッセージ |
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褥瘡(床ずれ)ができ、なかなか治療がうまくいかず、苦労されている患者さん、ご家族は多いです。少しでも早く良くなることが出来れば、患者さんの痛みも減り、これまで通りの日常生活を送ることが可能になります。在宅でも褥瘡の治療は十分可能です。連日の洗浄など大変な部分はあっても、治癒したときの喜びは何ものにも代えがたいものです。 |