糖尿病のインスリン注射をやめたい患者さんのケース

糖尿病のための、1日4回のインスリン注射が負担。
患者さん 77歳、男性、Hさん
症状 糖尿病のための、1日4回のインスリン注射が負担になっている。
実施した診療や医療 インスリンをやめられる状態にあるか、血液検査にて入念に確認し、薬を調整。
現在の状況 インスリン注射を徐々に減らし、内服に切り替え成功。インスリン注射は不要となった。

77歳のHさんは、2型糖尿病と診断され、1日4回のインスリン注射を約7年間毎日行ってきました。
年齢とともに、お一人での通院が難しくなってしまい、訪問診療が開始となりました。
訪問診療が始まったその日、Hさんは、診察に伺った在宅医に、こう切り出しました。

Hさん「もうインスリン注射やめたい。なんとかして。もういい。
毎回血糖値測って注射打って、1日4回も。
朝、昼、夜、寝る前って。多すぎてもう疲れた。」

在宅医「そうですね。毎日1日4回のインスリン注射は確かに大変ですよね。
血糖値の測定もありますし。」

Hさん「インスリンって血糖を下げるやつやろ?もうこれしたくない。
飲み薬じゃだめなの?もう自分も年やし、これ毎回大変で困る。
目も悪くなってきて、注射器の文字がよく見えん。なんとかならん?」

在宅医「いまは注射によって、身体の外から強制的にインスリンを入れてきました。それは、身体の中のインスリンを出す細胞が弱くなって、インスリンを出せなくなっていたからです。
でも長い間インスリン注射をやってこられているので、身体の中にあるインスリンを出す細胞がその間しっかり休むことができ、またインスリンをしっかり出せるようになっている可能性はあります。」

在宅医「インスリンを出す細胞が回復していれば、インスリンをやめて飲み薬の方法に替えることができることがあります。
血液検査を行ってそれを調べてみたうえで、結果がよければ徐々にインスリン注射をやめていき、内服に完全に切り替える方法(「インスリン離脱」といいます)をやってみましょう。」

血液検査を行った結果、Hさんはインスリンをやめることができる可能性がありました(空腹時血糖値やCPR、CPIなどの数値を確認します)。
2か月かけて徐々にインスリン注射から糖尿病の内服薬に切り替えていき、最終的にはインスリン注射を全く行わずに、内服薬だけで血糖値をコントロールすることができました。

1日4回のインスリン注射を「離脱」できたHさん。
日常生活の大きな不安が一つ減り、より一層自宅での生活を楽しまれるようになりました。
でもこれで終わりではなく、これからも血糖コントロールが大事なのは変わりません。
Hさんにもそのことをしっかりと説明をして理解してもらい、内服薬を正しく飲むこと、暴飲暴食や甘いものばかり食べることを控えることを実践してもらっています。

医師からのメッセージ
インスリン離脱はすべての患者さんで行うことができるわけではなく、身体の中のインスリンを出す細胞(β細胞)がきちんと機能を保持しているかが焦点になります。
そういう意味では、血糖コントロールが悪い患者さんの場合は、早めにインスリン注射を導入して、β細胞をしっかり休めて回復させることがとても大事になります。

インスリン注射を躊躇して、内服薬だけのままで血糖コントロールがどんどん悪くなる場合、どんどんβ細胞は疲弊してしまい、その後の回復可能性がなくなってしまいます。
インスリン注射をするというと、そんなに病気が悪いのかと思われる方も多いと思いますが、必ずしもそうではなく、β細胞をしっかり休めてインスリンを出す機能を回復させる時間を作るために、インスリン注射を導入するという側面を理解していただければ、インスリン注射への抵抗も減るのではと思います。

病状や治療について、きちんとわかりやすい言葉で説明することは在宅医にとって、とても大事な仕事の一つです。このように、訪問診療・在宅医療の守備範囲は広く、内科から外科、緩和ケアから褥瘡、認知症まで幅広く対応 いたします。

関連記事

  1. ご自宅で腹水穿刺を行った患者さんのケース

  2. 骨粗しょう症、腰痛、膝痛、通院困難、注射治療

    骨折歴があり、骨粗しょう症に悩まれている患者さんのケース

  3. 導尿バッグ

    尿道カテーテルの交換が必要な患者さんのケース

  4. 骨粗しょう症、腰痛、膝痛、通院困難、注射治療

    膝が悪く通院が困難な患者さんのケース

  5. 褥瘡(床ずれ)の治療について 【写真あり】

  6. 看取り、最後は自宅で過ごしたい

    最後は自宅で過ごしたい患者さんのケース

PAGE TOP